安全技術関係文献と最近の主な事故

安全技術関連文献(化学工学会2012年度年鑑)

1.国内外の動き

  • ①2011年3月に発生した東日本大震災では、化学プロセス産業においても多くの設備、プラントなどがダメージを受け、日常の安全管理活動だけでなく、緊急時の防災・減災対策の重要性が改めて認識されるようになった。安全技術としては,事故事例を教訓とした安全対策のあり方,事故の未然防止及び被害拡大防止を目的としたリスクマネジメントのあり方や安全管理システムの見直しなどに関する議論が行われている。
    Mary Kay O'Connor Process Safety Center International Symposium(2011.10.25-27、 Texas、 USA)が、"Beyond Regulatory Compliance; Making Safety Second Nature"をシンポジウムテーマとして開催されている[1]。Risk Assessment/LOPA、Process Management for Safety、Consequence Analysisに関する多くの研究発表が為されるとともに、安全管理システム(PSM;Process Safety Management)のパフォーマンスを評価するためのメトリックスのあり方に関する発表も行われている。
    [1]  Mary Kay O'Connor Process safety Center 2011 International Symposium、 http://psc.tamu.edu/symposia/2011
  • ②安全工学シンポジウム2011(7月7日~8日、東京、主催日本学術会議)が「グローバル化と安全」をテーマとして開催されている[2]。「安全の構築に向けて-東日本大震災によりあきらかになった課題と安全再構築の視点」、「プロセス産業の安全におけるトップマネジメントの役割」、「ものづくりと安全知の発信」の3件のパネルディスカッション、「BCP(事業継続計画)を巡る課題と動向~安全・安心・安定な社会作りへのアプローチ」、「事故調査の在り方-再発防止から予防安全へ」など14のオーガナイズドセッション、及び9の一般セッションでの講演発表が行われている。
  •  [2] 安全工学シンポジウム2011予稿集(2011)
  • ③化学工学会第43回秋季大会(9月14日~16日、名古屋、主催化学工学会)では、安全部会として「プロセス安全管理の課題とアプローチ」をテーマとしたシンポジウムを開催している[3]。保安技術教育、安全品質向上に対する取り組み、事故事例情報の有効活用に向けての取り組み、業務プロセスモデルを用いた設備保全、変更管理の見える化、アラームマネジメントなどについて幅広く議論が行われている。
  •  [3] 化学工学会第43回秋季大会講演要旨集(2011)
  • ④保安技術教育、安全品質向上に対する取り組み、事故事例情報の有効活用に向けての取り組み、業務プロセスモデルを用いた設備保全、変更管理の見える化、アラームマネジメントなどについて幅広く議論が行われている。安全講演会として「化学プロセスの安全管理-今後のプロセス安全(過去の知見・今回の大震災を踏まえて)」(11月24日、東京、主催同安全部会)が開催され、欧米におけるリスク管理の仕組みの紹介、プロセス安全のあり方、プロセス安全を実現させるための現場力などについて講演されている[4]。
    [4] 化学工学会安全部会安全講演会要旨集;化学プロセスの安全管理-今後のプロセス安全(過去の知見・今回の大震災を踏まえて)(2011)

2.研究・技術動向

  • ①化学プラントの安全管理の基本は、設計、運転、保全、技術、設備等の整合性を取ることであり、リスクアセスメントをベースに、計画、実施、評価、改善のPDCAサイクルで 安全対策を実施するための仕組みを創ることが重要とされる。安全部会では、プラント設計、運転、保全に関する業務プロセスモデルを構築している。これらの業務プロセスモデルは変更管理において設計情報(設計論理)を参照する仕組み、プロセス安全情報の伝達・共有の仕組み、リスクアセスメント結果に基づく安全管理の進め方、業務遂行に合わせた組織構成のあり方などの議論を可能とする。
  • [5] 仲ら;特集 安全管理の見える化 -問題解決のアプローチ-,化学工学,74,12(2010)
  • ②変更管理の論理的なアプローチの提案が期待されている。化学工学会安全部会の「変更管理のあり方」WGでは、変更管理の不具合を起因とする過去の事故事例を分析するとともに、軽微変更や同種置き換えなどの取り扱い、変更管理基準及び変更アセスメント基準に基づく変更管理の進め方、情報及び基準類のアップデートの流れなどにつ いて提案している。また、製油所でのプロセス改善を目的とした変更管理事例を業務プロセスモデル上でトレースすることにより、変更管理の業務フローを表現できることを確認している。
  • [6] 化学工学会安全部会,化学工学テクニカルレポートNo.43(2012)

最近の主な事故