背景及びWG の目的

プロセス安全管理(PSM:Process Safety Management)は、プロセス/プラント/操作の変更時に加え、定期的に(最低5 年に1 度)プロセス危険度解析(PHA:Process Hazard Analysis)を実施し、同定された新たなハザードに対して、変更管理(MOC: Management of Change)下で防御階層を含めた対策を更新してゆくことで、ライフサイクルを通じて安全を管理するための仕組を提供している。しかし、この仕組みは、PSM を構成する各エレメントが正しく機能して初めて実効されるため、PSM 自体のパフォーマンスをスパイラルアップするための仕組が不可欠となり、それがプロセス安全メトリクス(Process Safety Metrics)によるPDCA サイクルである。一方、定期的なPHA 実施において、新たなハザード同定のための初期事象などの情報や、PSM エレメントの不具合を見つけ出し、そのパフォーマンスの向上のためのメトリクスの導出のための情報は、事故調査エレメントの解析結果であり、PSM ではライフサイクル安全管理の成否、及びPSM パフォーマンス維持の成否は、この事故調査エレメントのパフォーマンスに依存するといってよい。

欧米では、事故を①プロセス安全上の重大事故、②その他の事故、③ニアミス、④不安全な挙動や不十分な運転原理による不具合の4 段階に分け、特に②~④からの情報を「learningfrom experience」としてPHA やメトリクスにフィードバックすることを考えている。一方、日本は、プロセス安全上の重大事故とヒヤリハット事故に大別し、特にヒヤリハット事故については、「水平展開」により情報の共有化が行われている。しかし、PHA への新たなハザードの同定や、プロセス安全管理の改善としてのフィードバックに、明示的に繋がっているとは言い難い。このことは、プロセス安全上の重大事故の場合も同様であり、事故固有の問題が強調され、他のプラントやプロセスの安全管理に、十分活用されてきたとは言い難い。本WG は、プロセス安全上の重大やヒヤリハット事故を含めて、プロセス安全事故情報を、継続的なPHA 実施における新たなハザード同定のための情報、プロセス安全管理パフォーマンス向上のための情報としてフィードバックし、「learning from experience」を実現するための仕組の構築と、この仕組みを事故解析ガイドラインとして作り上げるため検討を目的とする。

WG の進め方

次に示すCCPS-AIChE の二つのガイドラインを参考にする。

① Center for Chemical Process Safety (CCPS), “Guidelines for Investigating Chemical Process Incidents, Second Edition, New York: American Institute of Chemical Engineers, 2003.
② Center for Chemical Process Safety (CCPS), “Guidelines for Risk Based Process Safety, Chapter 19, Incident Investigation”, New York: American Institute of Chemical Engineers, 2007.

但し、米国が「learning from experience」を体系的に構築しているわけではないことは、CSB (https://www.csb.gov/) の事故報告書から明らかであり、それは情報の供給元である「事故解析」のみならず、情報の受け取り手である「PHA」の問題でもあると考えられる。そこで、上記資料を参考にした上で、以下のように進めてゆくことを予定している。

(1) 現状のプロセス事故解析、その情報の調査
(2) 水平展開手法の調査
(3) 継続的なPHA へプロセス事故情報をTransfer するための要件の検討
(4) プロセス安全管理のパフォーマンス評価へプロセス事故情報をTransfer するための要件の検討
(5) Learning from experience のための仕組の検討
(6) ガイドライン作成に向けた課題の検討

WG メンバー

渕野 哲郎(東京工業大学)、井内 謙輔氏(安全事例研)を代表、副代表として、プロセスケミストリWG、RBPS WG 等のメンバーに参加を打診し、その他は、本設立趣意書に賛同し、PSM に造詣のある人を条件に、安全部会部会員より公募する。但し、メンバーは15 名程度までとする。

スケジュール

2018年の8 月中に、KO ミーティングを開き、KO 後のスケジュール、やり方は基本的にメンバーで
決める。平均1.5 ヶ月に1 回を目安にWG ミーティングを開催する。

中途終了の連絡

2018年7月にメンバーを募集し、2019年3月から活動を開始しました。2年経過後の2021年3月まで多くの打合せを実施しました。時間をかけていただきどうもありがとうございます。2021年3月12日の事故解析WG後、その年の10月、プラントのモジュール化技術の方向性を見いだせたら、WGを再開するということになっていました。その後連絡することなく滞っていましたが、方向が見いだせないので、中途ではありますが、WGを終了いたしたいと思います。

その他

会場は、東京工業大学大岡山キャンパス南1 号館3階318 号室を予定する。コロナ禍においてはonlineも追加する。